毎日何らかのかたちで小麦を食べているが、小麦が危険であると言われ出した
パンやパスタ、ラーメン、うどんをはじめ、ケーキやクッキーなどの菓子類、あるいは揚げ物のころもなど日常には小麦を使った食品があふれています。日本に暮らしていて「今日一日、小麦をまったく食べていない」という人はいないと思えるほどに、小麦は生活に密着した食品と言えるでしょう。
しかしながら、最近になって「グルテンフリー」「糖質制限」などが台頭し、小麦が悪者として扱われ出してきました。小麦やグルテン、パンの危険に関する本も多くなっています。テニス選手のジョコビッチ氏が小麦を食べない、グルテンフリーを推奨し、アメリカ合衆国では、肥満や様々な生活習慣病は小麦が引き起こしたとし、それらが日本でも普及したからです。
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さて、本当に小麦は危険なのでしょうか?グルテンにより小腸に異常が生じる「セリアック病」、免疫システムが小麦を異物とみなし炎症を起こす「グルテン過敏症」、小腸に穴があき細菌感染などが懸念されるリーキーガット症候群、または肥満、活性酸素の発生、過剰な炭水化物摂取などなど、小麦にかかわる病気や生活習慣の乱れがウワサされますが、はたしてどうなのでしょう??小麦は悪者なのでしょうか??
小麦とグルテンの嘘
世の中騙される人たちのオンパレードなわけですが、その中でもトップクラスに代表される噓がグルテンは体に悪い、であると言えます。ちょっと知った人がいまや最も騙されているわけですが、これを見てまた信じられるか!という人が多いでしょう。なにせグルテンや小麦の問題は昨今一番と言ってもいいですし、グルテン腸症やグルテンフリーダイエットなんて言葉もありますし、私も小麦を減らせといつも書いたりしてますし。
治療時も小麦を減らしたりなくしたりするように指導してますが、それでもグルテンが危険なのは嘘なんですよね。そもそもグルテンとは何かというと、小麦、ライ麦などの穀物の胚乳から生成されるタンパク質の一種で、麺類やパンなど小麦加工品を作る上で弾性や柔軟性を決定し、膨張を助ける重要な要素だそうです。そして日本の小麦はもともとグルテン含有率が低く、だからパンが難しくうどんやそうめんだったわけです。
日本は小麦の大部分を海外から輸入しているそうで、輸入量5,000~6,000トンに対し、国内の生産量は700トン弱だとか。最近は朝食にパンを食べる家庭が約50%というデータもあるそうで、その結果なのか病気のやり玉にされているのが小麦であり、糖質制限でも目の敵にされているものの代表格ですね。たしかにGHQの政策によるパン、マーガリン、牛乳作戦で日本の学校給食がボロボロになったのは間違いありません。
なのになぜ流行語にもなっているグルテンは体に悪いが嘘なのでしょう。これは理屈でいえば先住民原則に通じますが、牛乳の危険性の是非にも通じます。牛乳が悪いはもはや常識になってきましたが、腸に作用しやすい点でも同じです。グルテンを摂取することで小腸が炎症を起こしセリアック病になる、というのは健康業やってれば有名な話ですが、これも錯覚なんですよね。
仮にグルテンがそのような作用を示すなら、なぜ古くからグルテンが入っている食品を食べた人々は、グルテンのいろんな問題を指摘されていないのでしょう?日本人もパンどころか麦飯も食べていて、篠田統『米の文化史』では鎌倉時代でもすでに一般的だったそうです。でもアレルギーやその類などその時代にはありません。でもグルテンは存在します。
参照元:内海聡医師のfacebook
小麦は古代から食べられていた。小麦が危険と言われ出したのは、ごく最近である
古代より小麦は世界中で食べられていました。また日本という国でも小麦はうどんやすいとん、そうめんなどに加工され食べられていました。
しかしながら、昔は小麦に関する危険は叫ばれていません。セリアック病、リーキーガット症候群も小麦アレルギーの報告もないのです。現実的に考えて、もし小麦を食べることで健康が損なわれることがあるなら、現代にその情報は受け継がれているはずですが、そのような報告はないのです。
上記のことから、本来「小麦は危険ではない」ということがわかります。より正確に言うとしたら「昔の小麦には危険がなかった」と言うべきでしょうか。でも、現代の小麦には危険が叫ばれています。
今、私たちが目の前にしている「現代の小麦」にはなぜ危険があるのでしょうか?
小麦は危険ではない。現代人が手を加え、小麦を危険にしている
今、私たち日本人が食べている小麦のほとんどは輸入小麦です。日本は国内食料自給率が低く、小麦も例外ではありません。元々、危険ではなかった小麦にどのような操作がなされているのでしょうか?
ポストハーベスト農薬の問題
国内産、輸入もの問わず小麦には特別なことがない限り概ね農薬が使われていますが、輸入もの、海外産の小麦には、栽培中に使われる農薬の他に「ポストハーベスト農薬」と言われる、収穫後に散布される農薬の影響があります。
輸入されてくる穀物や柑橘類にはポストハーベスト農薬と言われる、防腐剤、防カビ剤、防虫剤が散布されています。これは長期に渡る輸送や倉庫保存で農作物が腐敗したり、カビたり、虫に食われるのを防ぐためであり、さらには海外から新たな害虫が国内に入り込むのを防ぐためでもあります。ポストハーベスト農薬の散布は厚生労働省が法律で定めている義務でもあります。
また、小麦は他の農作物と比較しても生活必需品と言えるくらい、なくてはならないものです。したがって、他の農作物と比較するとポストハーベスト農薬がより厳重に何度も散布されます。ポストハーベスト農薬は栽培中に使用される農薬よりも強力で毒性が高いともいわれています。
このようにもともと小麦には毒性や危険性はないのですが、人間が手を加えることで毒性、危険性のある食品になってしまうのです。古代の小麦には化学農薬はありません。もともと小麦は危険ではなかったのです。
過度の品種改良による問題
現代の小麦は効率良く大量生産できるように過度に品種改良され過ぎています。大量生産できることで餓えをしのぐことは可能になりましたが、その反面、先述した多種の慢性的な病が増えました。もはや本来の小麦に見られるようなグルテンの構造は破壊されており、現代の小麦は過度の品種改良の果てに、「小麦」ではなく「小麦のような別の何か」になってしまっているのです。
上記した農薬問題ともかぶりますが、大量に小麦を生産するために、現代の小麦は農薬に耐性があるように改造されています。すなわち、大量生産の邪魔になる小麦以外の雑草や虫たちを農薬で殺し、小麦は農薬では死なないように改造するということです。また、風雨に負けないように背丈を低くするなどの改造もなされています。このようなことが繰り返されることで本来の小麦は「小麦のような別の何か」「小麦もどき」になり、危険な小麦へとなっていくのです。
また、現在ではまだ遺伝子組み換え小麦は海外、国内ともに認可されていません(ちなみに大豆、トウモロコシは認可されています)が、アメリカ、カナダ、オーストラリアまたは中国では遺伝子組み換え小麦の開発が進んでいます。認可されるなら国内よりアメリカをはじめ海外が先に認可されると思いますがどうなるでしょうか?
遺伝子組み換え小麦はさらなる小麦の危険を招くことになるでしょう。輸入されるであろうこれらの遺伝子組み換え小麦の多くはパン屋、ラーメン屋、居酒屋、ファミレスなど外食産業、あるいはコンビニ、スーパーの総菜、弁当に回されるでしょう。表示義務がないためです。
まとめ
お伝えしてきた通り、元々小麦は危険な食べ物ではなく、古代からずっと食べ続けられてきました。それが近年になって小麦を効率良く大量生産するようになって、人間が小麦の危険をつくってきたのです。
そしてこのことは小麦だけではなく、狭い牛舎で閉じ込められ抗生物質やワクチンを投与され、遺伝子組み換えの穀物飼料を与えられて育つ牛からとれる牛乳の問題。農薬、肥料を与えられ、雄性不稔技術をほどこされた野菜の問題ともリンクしてくるのです。
現在の日本は量から質へ移行する時代と言っても過言ではありません。また質の良い小麦を食べるなら問題ないのか?と言われれば、そうではないと思います。何事もバランスが大事でしょう。日本人は炭水化物過多の食生活に陥り、タンパク質やその他ビタミン、ミネラルは不足している状態です。小麦は嗜好品程度に考えた方が良いと思います。