【小麦 危険】現代の危険な小麦はどのような歴史を経て誕生し、危険視され出したのか?

小麦 危険

糖質制限、グルテンフリーなどのキーワードを目にするようになり、わたしたちの食事に馴染みのある食材「小麦」が危険なのでは??と言われるようになっています。

当ブログでも「小麦 危険」の視点から、「小麦が危険なのではなく、人間が小麦の危険をつくっている」という内容の記事を公開しました。以下のリンク記事です。

毎日何らかのかたちで小麦を食べているが、小麦が危険であると言われ出した パンやパスタ、ラーメン、うどんをはじめ、ケーキやクッキーなどの菓子類、あるいは揚げ物のころもなど日常には小麦を使った食品があふれています。日本に暮らしていて「今日一日、小麦をまったく食べていない...

内容的には、現在我々が日々食べている小麦のほとんどが輸入小麦であり、輸入に際してポストハーベスト農薬が散布されていたり、また大量生産向けに人工的に改造されており、そのために元々危険ではなかった小麦が、人間の手により危険な状態になっているというものでした。また日本の食事は炭水化物メインのものであり、他の栄養素が抜けてしまっているということも重要であります。

さて、そんな小麦事情ですが、今回は世界最古の穀物と言われている「小麦」がどのような歴史をたどり現在危険視されている小麦に変わっていったのか、それについて触れてみたいと思います。

現在世界的に栽培されている小麦というのは、その99%がいわゆる「矮性小麦(dwarf wheat)」ないし「半矮性小麦(semi-dwarf wheat)」と呼ばれる品種です。ただしこれらはいわゆる遺伝子組み換え品種ではありません。従来の品種改良によって生み出された小麦です。

ではなぜ矮性小麦が世界の主流となったのでしょう。これを知るためには、ハーバーとボッシュの発明した、「空中窒素固定術」という技術を知る必要があります。

ドイツ人科学者であるフリッツ・ハーバーと、BASFの技術者だったカール・ボッシュは、1911年に空気中の窒素(いわゆる固定窒素)から、アンモニアを作り出すことに成功しました。当初この技術は化学肥料の製造を目的としていましたが、アンモニアはニトログリセリンやTNT火薬の原料ともなることから、その生産は主に火薬製造に振り分けられました。

第一次世界大戦、第二次世界大戦と、空中窒素の固定術によって生産されたアンモニアは、戦争の規模の拡大や徹底的な破壊に多大なる貢献を果たしました。しかし戦争が終わり、アンモニア生成プラントは火薬製造という需要を失ってしまいました。

そこで本来の目的であった、化学肥料が大量に生産されることになりました。化学肥料、特に窒素肥料は劇的な収量の増大をもたらしました。特に窒素食いで有名であった作物であるサトウキビは、地力の低下で放棄されていたカリブ海の島々のサトウキビ畑を復活させ、砂糖の劇的な生産量の増大をもたらしました。

参照元:長尾周格歯科医師のfacebook

サトウキビの成功に続いて、他の作物でも化学肥料が大量に用いられるようになりました。アメリカ人やヨーロッパ人が好んで食べる小麦もまた、化学肥料によって飛躍的な収量の増加が期待されるはずでした。ところがこれは、思うようにはいきませんでした。
というのも、小麦は土壌の栄養が多すぎると、穂の部分が重くなりすぎてしまい、倒れてしまいます。イネや麦などでみられるこの現象を「倒伏」と言います。せっかく安価で大量の肥料が投入できるのに、小麦は思い通りに収量を伸ばすことができませんでした。
この問題に対処したのはアメリカ人農学者、ノーマン・ボーローグです。彼は倒伏に強い小麦の品種を生み出すための研究を行い、背が低くて倒れにくい小麦の品種改良に成功しました。これが矮性小麦です。この功績により、彼は1970年にノーベル賞を受賞しました。
化学肥料、農薬、矮性小麦によって、小麦の収量は飛躍的に増大し、さらにはインドやメキシコ、中国など世界各国で農作物が大量に生産されるようになりました。これがいわゆる「緑の革命」です。
矮性小麦の登場によって、アメリカ人のみならず、世界中で小麦製品が安価で大量に出回るようになりました。さらにはアメリカで栄養学者たちが「肥満や心疾患などの増加の原因は脂肪(飽和脂肪)やカロリーの摂りすぎであり、野菜や果物などのヘルシーな食べ物を食べよう。肉を減らして穀物をたくさん食べよう」と強く主張しだしました。これにより、アメリカ人の小麦摂取量は年々増加していくことになりました。
アメリカ人の小麦摂取量の増加、特に矮性小麦の摂取量の増加がグルテン・アレルギーやセリアック病の増加と相関しているからといって、因果関係が成立するとは必ずしも限りません。その背景に、アメリカ人の砂糖摂取量の増大があることを見過ごしてはならないのです。
すでに皆さんご承知のように、砂糖は小腸でのカンジダ菌の異常増殖とリーキーガット症候群の原因となります。リーキーガットによって免疫系が狂い、アレルギーや自己免疫性疾患が増大するメカニズムは良く解明されています。そこで問題となるのが、矮性小麦のグルテンがリーキーガットを引き起こしたのか?それとも砂糖がリーキーガット引き起こしたのか?ということです。
これについては結論を僕は持っていませんが、一つだけ言えることは、矮性小麦のグルテンがリーキーガットを引き起こすという、直接的な根拠は一切無いということです。

参照元:長尾周格歯科医師のfacebook

危険と言われる現代の小麦。どのような歴史をたどっているのか?

小麦粉

窒素固定技術と化学肥料

現代の小麦の歴史をたどるにあたってのキーポイントは「大量生産」です。小麦を大量生産するにはどうしたらいいのか?それには化学肥料が必要になります。

化学肥料の起源は1911年にさかのぼります。1911年、ドイツの科学者フリッツ・ハーバーと技術者カール・ボッシュは空気中の窒素からアンモニアを作り出す「窒素固定」の技術を開発しました。この技術は化学肥料に応用する予定でしたが、世界は戦争へと向かい、ニトログリセリン、TNT火薬の製造へと向かってしまいました。

その後、第一次世界大戦、第二次世界大戦の終戦をへて、ようやく本来の目的であった化学肥料の製造がはじまります。したがって、化学肥料を用いて作物を大量生産するようになったのは戦後、1950年あたりから、と言えるでしょう。

まずはサトウキビが化学肥料により大量生産されるようになった

化学肥料を使ってはじめに大量生産されるようになった作物は「サトウキビ」です。これにより砂糖が大量生産されるようになりました。

次いで、ヨーロッパ、アメリカなどで好んで食されていた穀物、そう「小麦」を大量生産する、という段取りになりました。しかしながら、栄養過多になった小麦の穂は重すぎて倒れてしまう、という問題が発生しました。

小麦が倒れないように品種改良し、背の低い小麦が誕生する

アメリカ人農学者、ノーマン・ボーローグが小麦の品種改良を重ね、背の低い小麦「矮性小麦」をつくることに成功し、1970年にノーベル賞を受賞しました。

これにより、1960~70年代頃から、世界中で小麦製品が安価で大量に出回るようになりました。また、同時期、栄養学者が「肥満、心疾患の原因はカロリー過多、脂肪過多の食生活が原因」とし、野菜、果物と並んで穀類、小麦の摂取を促した背景もあるようです。

現代の危険といわれる小麦がどのように誕生し、世界中に瞬く間に広がったのか?大雑把な背景は上記のような感じになります。

どうして、現代の小麦が危険と言われるようになったのか?小麦の歴史から見る、そのポイントは2つ。

小麦

小麦の歴史的背景から考察すると、現代の小麦が危険であると言われる所以は2つです。

一つ目は、化学肥料の大量使用と背の低い小麦「矮性小麦」への品種改良です。二つ目は化学肥料の誕生により小麦と同様に大量生産されるようになった、サトウキビ、砂糖の問題です。

化学肥料の大量使用と背の低い小麦「矮性小麦」への品種改良の問題

現代の小麦が危険と言われるようになった要因は、化学肥料使用の急速な拡大、それに合わせた背の低い小麦「矮性小麦」への品種改良により、元々あった小麦が改造され、おかしくなったためだと言えます。

化学肥料の流布が始まったのが戦後1950年代あたりであり、小麦が品種改良され急速に安価、大量生産されたのが1960年代あたりからだと思います。その後、人間の体は改造された現代的な小麦を摂取し続けることで、徐々に弱り、近年の小麦摂取による疾患の急増につながったと考えられます。

ですから、古代から食べ続けられていた品種改良以前の小麦は危険がないので、現代に見られるセリアック病、リーキーガット症候群などの症例報告がほとんどないのではないか?と思います。まったく報告がない、とは思いませんが、現代の疾患報告と比較するなら、断然低かったのではないでしょうか?

また、科学肥料、品種改良云々の前に、「小麦は食べ物」以前に小麦とは、「小麦という植物が繁栄するための大切な種子」ですから、容易に他の生物に食べられないように生物毒をもっているとも言えます。しかしながら、生物毒に関する危険性の報告もないことから、こちらの影響も低かったのではないかと思います。

やはり、品種改良以前の小麦は危険性が低く、現代的に改造され過ぎた小麦が危険であり、人間が小麦の危険をつくり出した、その可能性が高いでしょう。

化学肥料の開発で大量生産されるようになったサトウキビ、砂糖の影響の問題

砂糖の害についての詳細は長くなるのでここでは触れません。「砂糖 害」でネット検索すればたくさん出てきますので是非、検索してみて下さい。

さて、化学肥料の登場とともに小麦が大量生産され、安価で安定的に購入することが可能となりました。そして小麦以外の作物でもそのことが言えるでしょう。

サトウキビも大量生産が可能になりました。サトウキビから製造される砂糖の需要も急速に拡大したことでしょう。

小麦と言えば、パンやケーキ、クッキーなどの洋菓子類です。それらには砂糖が使われていますよね。ということは、「改造された現代的な小麦が単体として危険である」にプラスして「小麦製品に含まれる砂糖の危険」も加わるということです。

このようにして、「小麦の危険」は他の危険な食品との合算による影響も多いでしょう。「小麦は危険」を語るとき、この事実に触れない場合が多いようですが、かなりの影響があるのでは?と、私は思います。

また、砂糖以外の人工添加物の影響もあるでしょう。小麦は実に様々な食品に加工され、様々な添加物が加わるわけですから、当然ともいえます。さらにはパンにセットとも言うべき牛乳の影響もあるのではないでしょうか?

小麦の大量生産はパンの大量生産につながります、そして牛乳の大量生産にもつながります。小麦が現代的に改造されたのと同様に、牛乳も現代的に改造されていきます。

すなわち、牛を牧草地に放牧するのをやめ、せまい家畜小屋に閉じ込め、ストレスがたまり病気になりやすくなった牛に、ワクチン、抗生物質の投与、発育促進のためにホルモン剤の投与、エサも大量に必要になり、コストかからない遺伝子組み換えされた穀物飼料を与えるようになります。牛乳の質も小麦同様に危険になるのです。

このように、「小麦は危険」というのは、小麦単体としての危険に加え、小麦以外、砂糖などの他の食品の影響もプラスされ、より危険度が増すのではないか?と考えられるのです。

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