現代小麦は危険である。近年になってよく目にするようになりました。当ブログでも小麦の危険性について書いた記事があります。以下がそのリンクです。
小麦の危険要因は複数ありますが、その中で「現代の小麦は品種改良され過ぎで、本来の小麦(古代小麦)ではない」、だから危険である。というものがあります。
しかし、古代小麦でも現代小麦同様に危険性があり、その栄養成分は現代小麦とほとんど同じであるばかりか、食物繊維に至っては少ないという報告もあります。
今回はその件について新しい知見を得たのでシェアしたいと思います。
古代小麦でも
腸内環境の弱い人は「何を食べるか」の前に、まずは「何を抜くか」を実践する必要があります。その筆頭にグルテンフリー・カゼインフリー(GFCF)という食事法があります。
乳製品に含まれるカゼインを制限することは案外多くの人が出来ます。しかし、小麦などに含まれるグルテンに関してはなかなか難しいというのが事実としてあります。なぜなら、パン・パスタなどの小麦食品は美味しいからです。実際に、私自身も厳格なグルテンフリー・ダイエットはやっていません。たまには小麦食品を食べます。(私の場合、そうした疾患や症状がないからですが。)
そこで、こうした情報をよく見かけます。
「近代小麦は、古代の在来小麦に比べて、たんぱく質などの栄養組成が変わっているから、健康上の問題が出てくる。古代小麦なら良い。」
今日はこれについて簡単なまとめと見解を述べておきたいと思います。
米国でも、古代小麦なら安心であるから、セリアック病の患者に対しても毒性が低いという定説がありました。ところが、2013年イギリスの研究では、セリアック病患者13人を対象に古代小麦または近代小麦を摂取させ、その毒性度を比較した試験を行ったところ、古代小麦であろうと近代小麦であろうと、自己免疫反応を引き起こすことがわかりました(Clin Nutr. 2013 Dec;32(6):1043-9)。
確かに、小麦は、収穫量の増大(または害虫への抵抗性)そして加工用途や嗜好に合わせるために、特に1940年代のいわゆる「緑の革命」以降、大幅な品種改良が重ねられてきました。この品種改良によるグルテンのようなタンパク質やアミロペクチンの量の増加は、あらゆる加工食品の応用に結び付くからです(Nat Biotechnol. 2006 Sep;24(9):1078-80)。
では古代小麦であれば栄養素の組成や健康上に利点があるかというと、詳細を調べた分析では実は大して明確な違いはないとされています( J. Agric. Food Chem. 2011;59:928-933; Food Chem. 2016;213:8-18)。ただし、ミネラル含有量が減少したことは報告されています(Nat. Plants. 2016;2:16097)。
また、古代小麦と近代小麦の組成のデータを比較した研究があります。結果、古代小麦は、多くの成分の含有量において現代小麦種とほとんど変わらず、むしろ食物繊維は現代小麦よりも低かったことなどがわかっています(J. Cereal. Sci. 2015;65:236-243)。
2016年ポルトガルの試験でも、古代の在来小麦と近代小麦がセリアック病に対しての抗原決定基(→毒性エピトープ)の量を比較したところ、在来小麦の方がむしろセリアック病の免疫刺激性エピトープがあったことが報告されています(Food Chem. 2016 Dec 15;213:8-18)。
もちろん、在来の古代小麦は近代小麦と比較してなんらかのメリットはあるでしょう。しかし、セリアック病をはじめ、他の疾患や予防に対して、古代小麦が近代小麦の良好な代替となりうるかというと、やはりそれは難しいといえます(J Cereal Sci. 2018 Jan; 79: 469-476)。
結論、たとえ古代小麦でもやはり一つの小麦として考えるべきです。ちなみに、グルテンが含まれる穀物は、小麦以外に、大麦(押し麦、もち麦)、ライ麦などです。また、オート麦もグルテンに類似したプロラミンの一種やアベニンなどが含まれていますので、厳格な制限をする場合にはこれも除去した方が良さそうです(でも、オート麦はセリアック病でも99%はほぼ問題ないということ)。
グルテンフリーとしては、米粉やヒエ、アワ、キビなどの雑穀以外にも、キノアで作られたパスタなどもありますので、これらを利用するのもいいと思います。
セリアック病という病気があります。これは小麦や大麦、ライ麦等に含まれるグルテンというタンパク質が原因の自己免疫疾患です。グルテンの消化吸収がうまくいかず、腸内にダメージが生じる病です。
これに関して、現代の小麦は品種改良されすぎているので、うまく消化吸収されず、古代小麦なら大丈夫なのでは?という内容の記事がインターネット上でたくさん出ています。
ところが、2013年イギリスで行われた研究によると、セリアック病の患者さん(13人)に現代小麦、古代小麦両方を摂取してもらったところ、両者ともに自己免疫疾患が見られたそうです。
更には2016年ポルトガルの実験では、抗原決定基(アレルギーを引き起こす原因の化学構造)が現代小麦より古代小麦の方が多かったと報告しています。
上記の結果から、古代小麦でもセリアック病の患者さんは自己免疫疾患を起こす可能性があると言えます。
また、現代小麦と古代小麦の栄養素の組成や健康上の利点に関してはイメージ的には古代小麦の方が有利なのでは?と思われていますが、大きな差はないようです。
今回、引用元から判断するとセリアック病と栄養素の比較以外には触れていませんので、他の現代小麦に対するネガティブ印象はどうなのか?わかりません。
また、現代小麦から古代小麦にすることで何らかのプラス要素もあると思いますが、大きな期待はできない印象です。現代小麦が原因で健康を損ねている方は古代小麦に代替えするより、他の食品に代替えすることをお勧めします。
最後に私個人は、特に小麦に対するアレルギー疾患はありません。パンが好きなのでよく食べています。小麦は精製小麦ではなくなるべく全粒粉のもの、砂糖など余計な添加物が入っていないシンプルなパンを食べるようにしています。好きなものを無理に我慢するのも健康に悪いと考えているからです。嗜好品程度に考え、食べ過ぎないように気を付けています。