加工成型肉の問題について

成型肉

現代社会の食用肉は様々な問題点があります。当ブログでは以前「アメリカ牛の危険」について記事にしました。その記事が以下のリンクになります。興味のある方は是非ご覧になって下さい。

スーパーやデパ地下の精肉売り場、街のお肉屋さんでもいいです。お肉売り場を見たことはありますか?お肉売り場を眺めているとほぼ全ての人が分かると思いますが、国内産のお肉より海外産のお肉の方が安いですよね。これが当たり前として世に認知されています。 でも、...

さて、今回は「加工成型肉」の問題について書いてみたいと思います。

加工成型肉について

加工成型肉(以下成型肉)と聞くと、何を想像しますか?ハムやウインナー、ベーコン、あるいはハンバーグ、肉団子など人工的な技術によって製造された肉類を思い浮かべる人が多いと思います。

しかし今回お話しする成型肉とはそのような大衆に認知されているお肉の加工食品のことではありません。

ここで言う成型肉とは、捨てるはずだったクズ肉、細かすぎる肉を結着剤で一枚の大きな肉にしたり、赤身の硬い肉に和牛の脂を注入し人工的な霜降り肉にした肉のことです。

成型肉の実態について

わたしが成型肉に興味をもったのは、あるニュース番組の特集を見てからです。それをもとにお話しを進めたいと思います。

食肉加工会社、株式会社エヌケーフーズ(佐賀県鹿島市)という企業が紹介されていました。食肉を加工する会社です。そこでは硬いオーストラリア産の赤身肉をヒレやロースのように柔らかい肉に変身させることができます。

やり方は企業秘密とのことですが、結着剤という食品添加物により、オーストラリア産の牛バラ肉と国産牛の脂を結着加工することにより、人工霜降り肉をつくるのです。

「安い値段で、柔らかい肉を消費者に提供できる。」と語られていました。

また、成型肉を提供している飲食店も紹介されていました。ミートダイニングカフェ 中條(東京都荒川区)というお店です。その店では「バリューステーキ(成型肉)というメニュー」が提供されていました。

100gあたりの値段に換算すると、リブロースステーキが987円なのに対し、成型肉ステーキは517円。半額に近い価格でした。

実際に、成型肉を食べてみると、「柔らかいので切りやすい」、「一枚肉とは異なり、ソーセージのような食感」、「加工されているので、どこにナイフを入れてもあじは均一」、「噛み応えはあり、ステーキを食べたという満足感は充分に得られる」、とのことです。

お店の人は「成型肉は成型肉として明記し、客が納得して食べてもらうのが一番。」と語っていました。この店では「成型肉」と明記して販売していますが、情報をオープンしているお店は少ないとのこと。

次に、インジェクションという成型肉を製造する技術が紹介されていました。インジェクションとは肉に注射器を使って脂を注入し、人工霜降り肉をつくる技術です。

インジェクションの機械には104本もの注射針があり、針の先端の4つの穴から前後左右に脂が噴射される仕組みになっていました。

実際にオーストラリア産赤身肉に、液体加工された和牛の脂を注入するシーンがありましたが、機械のスイッチを入れると和牛の脂が勢い良く噴射され注射針が赤身肉に刺さると肉が膨張するのがわかります。そして赤身肉はピンク色に変わります。

その後注入した和牛の脂が流れ出ないように一晩冷凍庫で保管して、インジェクションによる人工霜降り肉の完成です。

インジェクション処理された成型肉は、加工前と比較すると肉に白い脂が入っているのが目視で確認できます。また注射針を刺す際に肉の繊維が切れるので食感が柔らかくなります。焼いて出したら和牛の味がするとのこと。

「肉自体はオーストラリア産でも、脂は和牛であり、味も和牛に近い、納得されるのでは」と食品技術コンサルタントの伊藤健氏が語っていました。

一般的に肉の味を左右するのは脂の風味であり、硬い赤身肉でも和牛の脂が加わればおいしく食べられる。街角での試食実験では「言われなければ、成型肉だとはわからない」という見解でした。

更に、ファミレス、焼き肉店、食べ放題の店など45の外食産業に成型肉についての取材を行ったところ、成型肉を使っているか?の質問に対し、はいが15、いいえが23、取材拒否が7という結果でした。

全体の3割強が成型肉を提供しており、内容はインジェクションや結着など様々な加工を行っており、肉を成型していることをメニューに表記しているか?の質問に対しては、「はいが10」「いいえが5」という結果でした。

はいと答えた10のうち、どのような表記をしているか?の質問対して、「霜降り加工」、「やわらかステーキ」、「カットステーキ」など、曖昧な表現のものばかりで、成型肉やインジェクション、結着加工などの明記をしているものはありませんでした。消費者は何をどのように加工したのか?具体的な加工方法がわからないのです。

それに対し外食産業からは、「肉に何らかの味付け、結着、インジェクションを加えることは数十年以上に渡って一般的に行われていたことです。個々の企業の情報開示を求める前に国や業界が明確な基準を設ける必要があるのではないでしょうか?」という声があがっていました。

加工成型した肉の表示は、
スーパー・小売店・・・表示義務あり(食品衛生法)
であるのに対し、
レストランなど外食産業・・・表示義務なし
となっています。

食品表示アドバイザーの垣田達哉氏は情報開示の必要性を訴えています。「加工処理した肉が世にたくさん出てきているので、消費者に対して、そのような事実を伝えていく必要性があるのでは?法律云々より消費者に対してどこまで親切に表示するか?そのようなことを外食産業は心がけるべきでは?消費者にわかりやすい表示をすること、食品への不信が募る中、最低限守らなければいけないルールなのでは????」とのこと。

特集終了後にニュースキャスターは「加工成型肉は身体に害を及ぼすものではない」と語っていました。

結着加工を行う実際の映像

動画共有サイトYouTubeに食品添加物を使って細かい肉を結着加工し、一枚の大きな肉にする動画がありました。

動画では一口大の肉を15個ほど、結着剤の食品添加物を使って一枚の大きなステーキ肉のように加工しているのがわかります。加工後の肉はつなぎ目こそ目視できますが、ぱっと見は一枚肉です。

更に、結着加工後の一枚肉に切れ込みを入れ、液体状の牛脂を注射器で注入していきます。インジェクション加工です。

その後、熱した鉄板で成型肉を焼いて完成です。焼いてしまうと肉のつなぎ目は目立たなくなり、よりいっそう初めから一枚肉であったかのように見えてきます。味は普通に美味しく、添加物の臭いはないとのこと。

また、使用した結着剤の食品添加物は、ポリリン酸ナトリウム、トランスグルタミナーゼ、ピロリン酸ナトリウム等となっていました。ハムなどを製造するのに使われている添加物とのことです。

参照元:YouTube

実際の成型肉、不当表示の事例

バーガー肉で不当表示=景表法違反でマックに措置命令―消費者庁

日本マクドナルドの期間限定商品「東京ローストビーフバーガー」の広告で、加工肉をつなげた成形肉なのに、ブロック肉のスライスを使ったように表示したとして、消費者庁は24日、景品表示法違反(優良誤認)で同社に再発防止を求める措置命令を出した。

消費者庁によると、同社は「東京ローストビーフバーガー」と「東京ローストビーフマフィン」の2商品をテレビCMやウェブサイトの動画などで宣伝。この際、赤身の加工肉を結着させた成形肉なのに、あたかも肉塊から切り出した牛肉を使ったように表示していた。

同社は開発段階で、食材にブロック肉を使った製品化を計画していたが、肉の量を増やすため成形肉も調達するようになった。結果的に、商品の約6割で成形肉が使われていた。

同社によると、2商品は昨年8月9日から9月上旬までの期間限定で販売。キャンペーン広告が話題の人気商品で、全国で約490万個販売された。

同社は、ブロック肉と成形肉は、工程は違うが品質は変わらないと強調した上で、「今後、お客さまには正しく、分かりやすい広告表現を行う」とコメント。再発防止に向け、広告表示に関する社内の勉強会を実施するなどとしている。

参照元:Yahoo!ニュース 

ローストビーフと銘打った商品に、塊肉から切り落とした肉ではなく結着剤を使用して加工成型した肉を使っていたため、不当表示になったという。

おそらく、外食産業では氷山の一角だと思います。上記ニュースは2018年7月のものです。

成型肉の問題点

さて今回は「成型肉とはどのような肉なのか」、「成型肉の実態について」、「成型肉が出来ていく過程の動画紹介」、「実際の成型肉の不当表示事例」という流れでお伝えしてきました。

成型肉の問題はどこにあるのか???

それは表示ルールが曖昧な点です。

スーパーや小売店には成型肉の表示義務があるのに対し、レストランなど外食産業には成型肉の表示義務はないのです。

そのため外食産業では「霜降り加工」、「やわらかステーキ」、「カットステーキ」などの表記が使用されています。なぜ、このような曖昧な表記をするのか?簡単に言うと誰も成型肉を好んで食べない、買わないからです。

だから、表示義務のあるスーパーや小売店では成型肉を見かけることはあまりありません。成型肉と表記された肉を買う人が少ないからです。したがって、成型肉のほとんどは表示義務のない外食産業に流れていくのです。外食産業は成型肉の行き先の受け皿的存在になります。

消費者から見れば、曖昧な表示をやめて、きちんとどのような加工をされた成型肉なのか表示すべきでは?と思いますが、食肉業界の利権、利害関係があるのでしょう。なかなか、簡単にはいかないのでは、と私は思います。

これは、成型肉の問題だけではなく、遺伝子組み換えの表示にも同じことが言えます。遺伝子組み換えされた作物は、作物そのままだと表示義務が発生して誰も買いません。したがって、総菜、弁当の材料、あるいは外食産に回されていくのです。

あなたは、成型された肉と成型されていない肉、どちらを食べたいですか?ほとんどの人は後者を選ぶことでしょう。きちんとした選択をするには安い肉、安い食品、安い提供品にはどのようなリスクがあるのか?きちんと知る必要があるのです。

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