『<食と健康>「現代野菜の栄養価は低い」は本当か?』に対する私なりの考察。

安い野菜、果物の危険性

何気なく大手ポータルサイトのYahoo!JAPANを見ていたら、次のような記事がヘッドラインにあがっていました。

『<食と健康>「現代野菜の栄養価は低い」は本当か?』

現代では野菜の栄養価が低くなっているとウワサされているが、それは本当なのだろうか?という記事です。この記事に対して何点かつっかかるものがあったので、今回はそのことを記事にしたいと思います。

<食と健康>「現代野菜の栄養価は低い」は本当か?

「昔の野菜と比べて現代の野菜の栄養価は低い」といううわさが根強く流通しています。文部科学省発行「日本食品標準成分表」の古い版より新しい版の方が、同じ野菜でも栄養価分析値が低い、という情報が根拠になっています。しかし成分表をよく読むと、どうも話が違うようです。管理栄養士の成田崇信さんのリポートです。【毎日新聞医療プレミア】

 私がこのうわさを初めて聞いたのは20年以上も前でした。「栄養価が低く、ただ野菜の形をしているだけなので食べても意味がない」という極端な話までありました。

 栄養価が低くなった原因として、次の3点がセットで挙げられることが多いようです。

 (1)化学肥料の使い過ぎで土地が痩せ、野菜がしっかり育たない(2)味や見た目を重視し、栄養価の低い品種が多く栽培されるようになった(3)旬を外れた栄養価の低い野菜が通年流通するようになった--。そして、これらの説を裏付ける資料に「日本食品標準成分表」が使われているのです。

 ◇ニンジンの栄養価分析値を比べてみると

 日本食品標準成分表は1950年に初版が発行され、これまでに7回改訂されています。最新版は2015年版(7訂)です。50年の初版と2015年版で、ニンジンの栄養価を比べてみると、確かに数値が違います。

 ニンジンに含まれる鉄分は初版が2mgで、最新版は0.2mg。またビタミンAも1万3500I.U(International Unit)から720μg(マイクログラム)になっています。数字は減っていますが、同時に単位も変わっています。こうした数値の違いを読み解くカギは、最新版に書かれていました。

 「食品成分表の策定に当たっては、初版から改訂までのそれぞれの時点で最適な分析方法を用いており、技術の進歩により分析方法に違いがある。このため食品名が同一でも、各版の成分値の比較は適当ではないことがある」。

 ビタミンA減少という誤解については、栄養価を表す単位の変化が関係しています。

 初版では、ビタミンAは国際単位=I.Uで表されています。物質が体にもたらす効力でその量を表す国際単位です。初版から4訂まではこのI.U表示でした。ところが5訂以降は、ビタミンAの主成分レチノール0.3μgを1単位とする「レチノール活性当量」表示に変わりました。

 この単位の変遷を考慮せず、単純に数字を比べても意味はありません。「ニンジンのビタミンAは、1万3500から720に激減した」と比べるのは間違いなのです。一般の人にとってなじみのない単位に変わったため、このような誤解が生まれたのでしょう。分析技術の向上だけでなく、単位の変化や体内での利用効率の見直しなどで、数値は変化してきたのです。

 ◇「おいしく食べること」は栄養価と同じぐらい大切

 成分表のデータだけで、野菜の栄養価を評価できないことがおわかりいただけたと思います。それぞれの説についても、私の専門である栄養学の側面から見てみましょう。

 <化学肥料の使い過ぎ説>=有機栽培した野菜の方が栄養価が高いという印象を持ちがちですが、過去50年間に発表された論文を系統的にレビューした結果、有機農法と通常栽培の野菜の栄養価に明確な差はなかった、という報告があります。

 <味や見た目を重視し、栄養成分を犠牲にした品種が増えている説>=栄養価の高い在来種のホウレンソウが出回らなくなり、西洋種やえぐみの少ない品種が増えたため、栄養価が下がったケースがあるかもしれませんが、すべての野菜には当てはまりません。

 例えば西洋カボチャの多くは、ビタミンAやビタミンCが日本の在来カボチャよりも豊富です。また、甘みが強くて味が濃厚なフルーツトマトやミニトマトも、大玉の桃太郎トマトより栄養価が高いと評価されています。栄養価が向上した野菜もたくさんあります。

 <旬の時期を外れた栄養不足の野菜が出回るようになった説>=望ましい時期に育った野菜の栄養価はもちろん高いのですが、栄養価が低くても季節を問わず好きな野菜を食べることができる幸せもあります。栄養摂取の側面も大切ですが、食べる喜びも栄養の一つ、と私は考えています。

 成分表を根拠に野菜の栄養価が下がっているという話は、単なる誤解でした。ですから、栄養補給をサプリメントに頼らず、おいしい野菜をどんどん食べてほしいと思います。

参照元:yahoo!ニュース

上記リンクの記事を書かれたのは「管理栄養士の成田崇信氏」です。言ってみれば、食、栄養のスペシャリストの方でしょう。指摘されている「現代野菜の栄養価が下がっている」というのは、「日本食品標準成分表」の読み違いによる誤解が原因なのでは?と述べられています。

野菜

「栄養価の数値を示す単位が変わっている」について

成田氏によれば、ニンジンを例に話を進められていますが、ニンジンに含まれる「ビタミンA」の数値が極端に減少しているが、これは「単位」が変わったことにより、数値も変わってしまったとのことです。確かに「I.U」という単位から、「μg」という単位に変わっています。

数値も「1万3500」から「720」へと激減しているので、この激減数が「現代の野菜は栄養が減っている」と誤解を与えていると指摘されています。

しかしながら、単位と数値は変化していますが、結局のところニンジンに含まれるビタミンAの含有量は、昔と今では同じなのか?増えているのか?減っているのか?肝心なところには触れられていません。なぜなのでしょうか?理由が分かりません。

また、ビタミンA以外の栄養素である「鉄分」に関しては2㎎から0.2㎎、実に10分の1に激減していますが、それについての言及は一切ありません。なぜなのでしょうか?これでは成田氏による印象操作なのでは?と疑いの目で見る人も多くなってしまうのではないでしょうか?

「化学肥料の使いすぎで栄養価が減った」について

「現代の野菜の栄養価が減っている」の根拠に化学肥料の大量投入により土壌がやせ、しっり育たなくなったことを取り上げていますが、栄養価を比較するために、有機栽培野菜と普通の野菜(慣行栽培野菜)の栄養価の比較を例に出され、成田氏によれば、有機栽培野菜と慣行栽培野菜の栄養価は明らかな差は認められなかったとされています。

しかしながら、有機栽培野菜と慣行栽培野菜の栄養価の比較だけで、わかることなのでしょうか?

有機栽培野菜といえども、その栽培過程は幅が広いです。有機栽培というと無農薬である印象が強いですが、実は無農薬の有機栽培野菜はごく一部でしかありません。有機栽培野菜には法的に認可された農薬の使用が認められており、ほとんどの有機栽培野菜には農薬が使用されています。

また、化学肥料の使用はされていませんが、使用される有機肥料の質も問われます。動物性の肥料は、元となる動物が何を食べているかで、その質は変わります。一概に有機JASの認定がされた野菜でも、その栽培方法と質は様々なのです。詳しくは、過去に書いた以下のリンクにある記事をご参照ください。

自然栽培とその他の栽培の違いについて 普通にスーパーや100円ショップなどで販売している産地のみ明記された野菜は「慣行栽培」の野菜です。慣行栽培は農薬や化学肥料を使って作物を栽培します。それに対し無農薬(あるいは一部の認可農薬)で化学肥料ではなく、有機肥料を...

上記のことから、有機栽培野菜と慣行栽培野菜の栄養価の比較はあまり意味がないのでは?というのが私の考えです。栄養価減少についての化学肥料による影響を考察するのであれば、「化学肥料が使われ出す以前の自然栽培野菜」と「現在の慣行栽培野菜」との比較の方が、より有意性のある比較になるのではないでしょうか?

「味や見た目を重視し、栄養成分を犠牲にした品種が増えている」について

成田氏によると、カボチャは在来種から西洋カボチャに代わりビタミンAやビタミンCの含有量が増え、トマトも栄養価が向上したと述べられています。確かに栄養価が向上した野菜もあると予想できますが、栄養価が低くなった野菜もあるでしょう。

また、味や見た目の変化というのは、化学肥料や農薬、品種改良の影響が大きく関係していますが、そのことについてはどうなのしょうか?成田氏はそのことに関しては言及されていません。

現代の野菜は端的に言うと、形が同じように整えられ、より大きく、味は糖度重視の野菜であり、それらは大量生産用に開発された野菜です。

大量生産用の野菜は窒素固定技術による化学肥料が大量に投入されます。よって窒素化合物の含有量が増加します。形、大きさが調整され、更に病気になりにくい品種が求められます。そのため農薬が必要になるので、収獲する野菜には農薬に含まれている成分も増えるでしょう。また、糖度ばかり重視されれば糖度以外の栄養素は減るのではないでしょうか??

私の言説には科学的ではない憶測も含まれますが、普通に考えれば上記のような私の考察、憶測は誰でも予想できるものだと思います。

作物の大量生産に関する危険性の記事は以下のリンクにまとめてありますので、興味のある方はご参照ください。以下の記事は「小麦」についての記事ですが概ね現代の大量生産用の野菜にも当てはまると思います。

糖質制限、グルテンフリーなどのキーワードを目にするようになり、わたしたちの食事に馴染みのある食材「小麦」が危険なのでは??と言われるようになっています。 当ブログでも「小麦 危険」の視点から、「小麦が危険なのではなく、人間が小麦の危険をつくっている」という内容の記事...

栄養価が向上した野菜もあるが、その陰で多くの野菜は化学肥料、農薬、品種改良により危険にさらされているのも確かなのではないでしょうか??

「旬の時期を外れた栄養不足の野菜が出回るようになった」について

成田氏によれば、旬の野菜は栄養価が高いと述べています。私もその通りなのでは、と思います。しかし、成田氏は「食べる喜びも栄養の一つ」とまとめています。

これには正直驚きました。私個人としても、食に関するポジティブ要素、ネガティブ要素、両者を考慮した上で、「おいしいと感じるもの、身体が求めているものを食べること」、「食べる喜び」はお勧めしたいです。

しかしながら、成田氏に関して言えば、「管理栄養士」という科学的論証をする立場の方でしょう。そのような立場の方が簡単に「精神論」でまとめられているのに違和感を抱かずにはいられません。

これでは、最終的に科学的考察、論証されている部分も疑いの目で見てしまう、そのような人は私だけではないと思います。残念です。なぜ最後だけ科学的データを出さず、精神論で通したのでしょうか?理解が出来ません。

今回の記事のまとめ

安い野菜、果物の危険性

今回は『<食と健康>「現代野菜の栄養価は低い」は本当か?』ということを管理栄養士の成田崇信氏が述べたことに関する私なりの考えを書いてみました。

結論として、最終的に成田氏は「栄養摂取の側面も大切ですが、食べる喜びも栄養の一つ、と私は考えています。」と科学的言説ではなく、精神論を述べられ、「成分表を根拠に野菜の栄養価が下がっているという話は、単なる誤解でした。」とまとめられています。

個人的には管理栄養士という科学的言説をすべき専門の方が、精神論と科学論をごっちゃにしているところに違和感を抱きましたし、先述の通り、各所に印象操作的な内容も見受けられました。

野菜の良さ悪さというのは、栄養価だけという単一方向、あるいは食品成分表という単一方向だけで見解するのは危険だと感じました。現代的な大量生産用の野菜がどのようにして誕生したのか?個々人がその背景を知り、知識を身に付け、更には知識を経験とし、知恵を身に付けることが重要だと思います。

餓えることのない飽食の時代を通過した現代だからこそ、ポジティブ要素、ネガティブ要素の両者が見えてきます。そして現代はそこから「健康とは何か?」を考え、実践できる時代だと言えるでしょう。

多少話しがそれ、私の見解は科学的でない部分もたくさん含まれていますが、今回はそのように感じました。

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